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5th Solo Album『琴線』リリースします。

8月23日
読了時間: 10分

 完全なソロでもって、バラード、というかテンポのゆったりしたスローな曲ばかりを集めた作品を作りたい、というのは、多分20代の頃からぼんやりと思っていました。

 目が覚めるような速弾きや、分かり易い超絶技巧に憧れるコトも瞬間的刹那的にはあるものの、自分の内側の芯の部分にまで刺さるものは結局、ゆるやかにジンワリ染みてくる、深みと奥行きのある音なワケで、自分でもそういった音を出せるようになりたくてこれまで続けてきたようなトコロは大いにあるワケです。

 もしかしたら、アコーディオンだったらそういうジンワリ系の音って得意そう、って思われガチなのかもしれないのですけど、いやいやどんな楽器でも速弾きとは全然違う難しさがあるのですよ、ゆっくり美しく演奏するのって。


 そういう演奏技術を、ある程度自分で納得できる段階まで習得するのに、気がついたら30年くらい経ってしまっているし、そりゃ未熟さを挙げだしたらキリがないのだけれども、そろそろやってみようか、やるしかないよな、よしやろう、いやでもその前にコレ録っておかないと先へ進めない、と思って録ったのが前作『伏線』でした。(ソレについての詳しくはコチラ


 で、ようやく録りました、今作『琴線』

 スローな曲ばかりです。

 自分がこれまでに聴いてきた、ジャンル関係なく有名だろうとなかろうと誰が何と言おうと自分の”琴線”に触れてきた古今東西のジワる名曲たちをカヴァーしました。


 ただし1曲だけ自作曲を収録してまして、そのあたりのイロイロと、だいぶ余計なハナシも含めた各曲の解説を、原曲のYoutubeのURLも添えて下記に。



ー ー ー



 

1.東風(Tong Poo) / Sakamoto Ryuichi

 小学1年生だったと思うのですが、確か兄貴が親から買ってもらったのであろう、ウチに「ライディーン」のシングルレコードがやってきたのが初のYMO体験でした。

 以後、テレビの歌番組などではあまり聴こえてこない(但し「君に胸キュン」を除く)YMOの音楽に夢中になっていくワケですが、何よりこの「東風」はBメロのコード進行だけでご飯三杯はイケちゃうくらい最高に美しいんですよね。

 その内声の動きの美しさをしっかり聴かせるにはテンポを落とすのが最善策だろうと思ってライブで超スローテンポで弾いていたら、作曲者ご自身が晩年スローテンポで録音してらして嗚呼やっぱりそうですよねと。 



2.Diana / Wayne Shorter

 ジャズ方面を聴き漁るようになり、耳コピしまくるようになり、まぁ色々な曲を譜面に起こしてたりする中での、この曲の変態性たるや。

 いやもちろん美しいのですよ。でもその美しさの中に、色々な毒が潜んでいるワケです。

 例えば冒頭から4度積みコードの不穏な美しさ。

 ほか、言葉にするのは野暮なくらいの。

  


3.Blue in green / Miles Davis

 アルバム「Kind of blue」をハイポジションのカセットテープに落として、何故かこれだけを何度も何度も繰り返し聴いてました。 

 サッカー部の練習が終わってウチに帰ってきて膝を抱えてコレを聴くという何とも陰キャな中学生。

 そのまま弾くのもナンだなと思いまして、内声を色々動かしているウチに更に陰キャなコジらせアレンジに。



4.風をあつめて / Hosono Haruomi

 はっぴいえんどオリジナル ver. https://www.youtube.com/watch?v=PfFEPtJE0D4

 アッコちゃん ver. https://www.youtube.com/watch?v=SI98p8aLf-E 

 矢野顕子さんのアルバム『Welcome back』『Granola』『Super Folk Song』は良く聴いたものです。

 『Granola』でこの曲を最初に知ったものですから、オリジナルバージョンは後から知ることになるのですが、アッコちゃんバージョンがあまりに鮮烈で。

 


5.Ramo De Delirios / Guinga

 師匠Daniel Milleの1stアルバム「Sur Les Quais」は文字通り人生の転機になったアルバムですが、そこに収録されていたこの曲のまぁなんとも摩訶不思議なこと。

 今回大人の事情で収録の叶わなかった坂本教授の「A Tribute to N.J.P.」と同じく、奇っ怪にも思えるメロディを美しいコードワークで支える構造に耳と心を奪われるワケです。



6.Kafu mi draga ispeci / Bosnia trad

 Amira(Bojan Z) ver. https://www.youtube.com/watch?v=QNmoM7pDVPc

 ボスニア出身のピアニストBojan Zについては留学中に知ってすぐさまファンになり、1999年に参加したサラエヴォ・ジャズフェスの打ち上げ会場で初めて声をかけ、そこで買ったアルバム『koreni』には随分と夢中になり、周辺を追っかけている中で彼がプロデュースした歌手Amiraの民謡曲集に出会い、そこに収録されていたこの曲にはもう完全にヤられてしまったものです。

 にしても原曲とのギャップたるや。

 つまりはBojanのアレンジと演奏の素晴らしさ(と勿論Amiraの歌の素晴らしさ)にヤられてしまったワケで、彼に敬意を評してAmiraバージョンに寄せて収録。



7.My Old Flame / Arthur Johnston

 3枚目のソロ『稜線』に収録した「'Tis Autumun」も、この「My Old Flame」も、高校時代から聴き続けている愛聴盤、エラ・フィッツジェラルドとジョー・パスのアルバム『Again』で覚えたスタンダード・ナンバー。

 極力シンプルに弾いたつもりなのですが、改めて本家を聴くとそのグルーヴのまぁ奥深いこと。



8.Naima / John Coltrane

 コルトレーン不朽の名作『Ballads』も高校時代にまぁ良く聴いたものです。

 ソコからの選曲も考えたのですが、この曲は何よりコルトレーンが書いた中でも最高のバラードだし、何よりアコーディオンソロと相性が良いし。

 ちなみにこの曲が収録されているアルバム『Giant Steps』といえば、泣く子も黙るこのタイトル曲のコード進行を使った某曲を、Saxの巨匠・川嶋哲郎さんとデュオのアルバム『Reason of Reeds』で録音したのも良い経験でした。



9.自転車でおいで / Yano Akiko

 前述「風をあつめて」と同じく『Granola』収録のこの曲、色々なものが自然に流れているように聴こえますが、例えばAメロ中の、E♭からGm - Dm - Am - Emと5度上がる進行が4回もあってから再びE♭に戻ってくるなどという、ちょっと誰にも思いつかないようなコトが何気なくサラっと行われているんですよね。

 メロディとコードの(勿論それ以外もですが)天才的なヒラめきについては、2024年に共演させていただいた時にもホントに驚いたモノです。そしてご一緒させていただいた「ラーメン食べたい」はホント最高でした。



10.24の前奏曲とフーガ より第1番ハ長調 Op.87-1 / Dmitri Shostakovich

 学生時代から聴き漁っていたキース・ジャレットが新譜を出したというので早速買いまして聴きまくりまして楽譜を調達しまして読み始めまして1番のフーガの譜面を見た時の衝撃たるや。

 C dur(ハ長調)であろうとなかろうとフーガなら必ず出てくるはずの臨時記号が何処にも見当たらない!

 しかも指定より少し遅めのテンポで弾くキースのお陰で劇的に美しいではないですか。

 …というこの曲との出会いから30年経っての収録。 



11.靴 / Sato Yoshiaki  

 高校の同級生で大学を出てからはwebデザインもしていたヤギちゃんこと柳下くんは、当ホームページ「蛇腹活動報告」を作ってもらったり、 ライブにもちょいちょい来てくれたり、趣味のギターの録音を送ってきてくれたり、ユルくとも長く続いていた友人の一人でした。

 そんな彼の三回忌に近しい友人で集まろうという話が出た際、手ぶらもナンなので彼を思いながら曲を作ってみようかと思いまして、ピアノをポロポロと弾きながら小1時間ほどで完成。

 さてその当日、最寄駅の改札を出て数歩歩いたらスニーカー(古くないしシッカリした割とイイやつ)の靴底がパカっと取れまして。(その時のインスタ→ https://x.gd/hfrNM )

 慌てて付近の靴修理の店へ駆け込むもすぐには直らないと言われ、他の靴屋へ駆け込み代わりのスニーカーを買ってどうにか難を逃れたワケですが、これ、どう考えてもヤギちゃんのイタズラだろうと。

 超久々に集まった旧友たちと四方山話をし、ヤギちゃんやってくれたな〜などと思いつつ御霊前で無事に初演。

 その時点ではまだタイトル未定だったこの曲を、シンプルに「靴」と命名。

 ちなみに。

 御霊前での初演後、靴事件の顛末をSNSに書いたトコロ各方面からそういう事例ありますよという報告が多数あったり、決定的だったのは、ヤギちゃんご家族がライブにご来場くださった際にヤギちゃんのお母様の靴底も剥がれるという事件も発生しまして、あぁやっぱりそういうコトなんだなぁと思った次第。

 今回は基本カヴァーアルバムですが、どうしてもこの曲をカタチにしたかったので、自作曲を1曲だけ収録しました。

 そして、盤が届いた翌日ヤギちゃん宅へおじゃましまして、完成の報告をしてきました。

 靴底の剥がれないような靴を履いて。




ー ー ー




 誤解を恐れず言うと、今回のアルバムで目指すトコロは"極上のBGM"なのです。


 例えばカフェでBGMとして流れている音が、「オレを聴いてくれ!」などと叫ぶ様な音だったらBGMには成り得ませんから、そういうのとは対極の、どこにもぜーんぜんチカラが入っていなくて、軽やかにサラサラ〜っと聴き流せる様な音の方がより空間に溶け込むのではないかと。

 でもそれがよーく聴くと決して内容が薄いワケでは全然なくて、むしろモノ凄い中身を涼しい顔してサラっとやっちゃってる様な、そんな音楽になれたら良いなと思うワケです。


 例えば敬愛するバンスリ奏者Hariprasad Chaurasiaの、呼吸することがそのまま音楽になっていて、たまたま吐いた息が笛に響いて鳴っちゃって、ちょっと面白くなってきたから少し遊んでみたりして、ちょっと盛り上がってみたりして、そうこうしているウチに落ち着いてきちゃったから終わるかぁ、ていう様な"神々のお戯れ"みたいなのが最高なのです。


 鳥とか虫が鳴くがごとく、自己顕示欲などとは無縁の、そこに在るだけの、ただただ鳴って(成って)いるだけのもの、その空間に溶けてしまっている音、になれたら良いなぁ…などと常々思っているのですが、今回のアルバムは果たしてそういう方向に少しでも近づけましたかどうか。

(いや鳥とか虫とか本人的にはめっちゃ求愛してたりするのかも知れないのでアレはもしかして100%以上の自己顕示欲のカタマリなのかもとも思ったり。)


 とか言いつつ某ガレージシャンソン的なヤツみたいに毒まみれでBGMなどには決して成り得ない方向のモノも真剣に(!)やっていたりするワケで我ながらナニを言っちゃってるんでしょうね。紛うことなき自己矛盾。




 兎にも角にも、今作「琴線」。

 個人的な思い入れは沢山ある内容なんですけど、色んなこと抜きにして、これまでの作品同様、ただただ音を楽しんでいただけたら嬉しいなぁ、と思うワケです。 




 と、今回のジャケットなのですが、自分の顔を全面に出すデザインにしてもらいました。

 そろそろ、なんとなく、ぼんやりと、人生の後半戦に入ってきたことを実感することも増え、今のうちにやりたいことをやっておきたいし、カタチにしたいものはカタチにしていきたいし、恥ずかしがったりカッコつけたりせずに自分はこういうヤツですっていうのを正直にさらけ出しても良いな、と思いまして、こういう展開に相成りました。

 前述の自己顕示欲の話とは、またしても矛盾しちゃってますが。



ー ー ー




 そして、今回も各方面で最高に手厚くサポートしてくださった皆々様に感謝です。


 F.S.L.レーベル代表、藤森さん。

 超絶お忙しいハズなのに時間を作ってライブにいらしてくださり、しかも毎回違う「芋ケンピ」を差し入れてくださり(!)、その思慮深さにいつも痛み入る次第です。


 レコーディング・エンジニア、種村さん。

 あの駄洒落さえ無ければ最高に仕事のできるイケボのイケオジなのに、佐藤個人のプロジェクトを毎回素晴らしい音に仕上げてくださり、20数年来の揺るぎ無い信頼が今回をもって更に強固なものになってしまい、いやぁホントいつもありがとうございます。


 デザイナー、小倉さん。

 今回は写真も撮ってくださり、佐藤のワガママを大いに受け止めてくださり、その謙虚さの中にセンスが眩しく光るビジュアルに仕上げてくださり最高に嬉しいです。



 そしてこの作品を耳にしてくださった皆々様に心から御礼申し上げます。



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 ※ソロアルバム1作目「対角線」、2作目「Cinq Lignes(5本線)」は既に販売を終了しております。

 ※ソロアルバム3作目稜線4作目伏線は絶賛発売中、サブスク各プラットフォームでもお聴きになれます。



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