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トークセッション《耳の内側》第7回 番外編〜いままで聴いてきた蛇腹、いま気になる蛇腹〜

四谷三丁目「ホメリ」でこれまで6回の開催でご好評いただいてきた、ゲストが聴いてきた音楽遍歴に迫るトークセッション《耳の内側》ですが、第7回目は”アルジ”こと店主・宮内さんのバースデー記念企画で、佐藤自らの遍歴を語る特別編として開催しました。

ジジイの昔話は百害あって一利なしだと思っているのですが、この特別編が意外や意外、告知開始早々にご予約満席を頂戴しまして、まとめてこういう話するのもまぁまぁレアだし需要も少しはあるのかなとも思い直しまして、自分が聴いてきたものと、いま気になっているものを、ココのブログ(駄文枠)でも内容の一部を公開しようかという目論見であります。



今回はあくまでも”蛇腹"特集としましたので、そっち方面以外のコトについてはまたの機会にすることにして、蛇腹関連だけにシボりました。

ホントは蛇腹関係ではない方向からの方が圧倒的に影響を受けまくっているのですけど。



で、音源は皆さんが確認出来るようにyoutubeで。



いやね、自分が20代になるまではyoutubeどころかインターネットさえ無かったワケです。

蛇腹レア情報は雑誌かレコード屋(CDショップなどとは言わない)か楽器屋かクチコミしかなかった時代、少ない情報をスポンジの如く吸収しておりました。


小学生でYMOの洗礼を受け"貸しレコード屋"をハシゴし、中学からジャズを聴き漁りはじめ、高校からは「スイングジャーナル」を定期購読しつつクラシックにも手(耳)を出し始め学校帰りに中古レコード屋をハシゴし、更に何を思ったか音楽大学に進学してしまい大学の図書館で色々聴きまくっているウチに、現代音楽の畑でアコーディオンを初めて耳にするワケです。

ナニこの楽器スゴ!というのがファーストインプレッション。



というワケで本題へ。



◆いままで聴いてきた蛇腹◆



色々ありますが、まずはこれですね。金字塔。

Friedrich LIPS「De profundis」Sofia Gubaidulina

ちなみに譜面はこんな感じ。


神保町にあったロシア専門のレコード屋『新世界レコード』で何か良く分からないままバヤンのレコードやら楽譜やらを買ってみたり。

留学資金を貯めるべくバイトをしていた横浜・青葉台のフィリアホールでお近づきになった御喜美江先生から楽譜を見せていただいたりしたこの曲もなかなか思い出深い。

Guy Klucevsek「Road Runner」John Zorn

サブスクやらyoutubeには上がってませんが御喜先生1991年の名盤『モーツァルト in クラシックアコーディオン』収録の「トルコ行進曲」終盤某箇所の、とある弾き方を伺った時は余りの衝撃でノケ反りましたがここではナイショにしときます。

また後年ジョン・ゾーンご本人とは「ゴブラ」でご一緒した際に色々イジられてあまり良い思い出がないのもナイショにしときます。


話は戻りまして。

1990年代初頭あまり一般的でなかったピアソラも大学図書館で耳にしまして、一時はコピーバンドもやってたりしてたのもナイショです。

Astor Piazzolla Vayamos Al Diablo(邦題:悪魔をやっつけろ)

ちなみに、いまや伝説もしくは幻になりつつある変態タンゴバンドSalle Gaveauの3rdアルバム『La Cumparsita』収録の拙作「悪魔にやられた悪魔」はこれのアンサーソング的なつもりで書きましたとさ。



で、そういうコトならアコーディオンでジャズやってる人もいるだろうなと思ってたら、やっぱりいらっしゃいました大師匠。

Richard Galliano「Beritwaltz 」

中でもコレ↓はトランスクライブもしたのでソロの一字一句覚えてます。

「Waltz for Nicky」

でも個人的にはリーダー作よりサイドメン/サポートメンバー/ゲストで仕事してる大師匠が好きだったりして。

「Bouche d'or」Daniel Goyone

「Comme Un Départ」Anouar Brahem

「Horliogerie」Ivan Paduart

独学屋にとって大師匠は文字通り参考書の様な技のデパートで当時は随分聴きまくったものです。


アメリカにもジャズアコーディオン黄金時代があったのに何故かあっという間に廃れてしまっていたコトを後に知るワケですが、しかしそれほど聴き込むことは無く…。

阿佐ヶ谷のジャズ屋『マンハッタン』マスター望月さんはアメリカのジャズアコーディオンにめちゃ詳しくて、店の奥からレア盤をいくつも出してきて「サトーくんこれ知ってる?」と言いながら色々聴かせてくれたこともあったり。



そうこうしているウチに師匠の1stアルバムが出るワケです。

Daniel Mille「Sur les quais」

最初パっとしなかった(すごい失礼!)のに何度か聴くウチに全然派手じゃ無いけどなんかスゴいぞと。

で、留学先を探す中で彼が先生業してるジャズの学校を見つけフランス語は1ミリも出来ないまま迷わず渡仏。

華の都では図書館をハシゴして日本では聴けないレアものCD借りまくりの日々。


そして師匠がレッスンの際に「友達がアルバム出したんだけどさ、コレどうよ?」と言って聴かせてくれてぶったまげたマダガスカルのグルーヴ。

未だに彼を超えるアコーディオンの弾き語りに出会ってない気がするし、変則べローシェイクが凄すぎるんですけど、しかし亡くなるの早過ぎでした。

Regia Gizavo「Mpembe」

「Mahavatse」



話は前後しますが留学前、ディスクユニオンでバイトをしていた超絶音楽マニアのN井くんにブラジルのヤバい人Hermeto Pascoalやらブルガリアの巨匠Ivo Papasovやら世界のヤバい人たちを教えてもらいまして、Hermetoはいくらマルチ奏者といってもディアトニックアコーディオンの腕前があまりに凄すぎだったり。

Hermeto Pascoal


一方Papasovはこういう方向なんですが、

Ivo Papasov (clarinet)「Hristianova Kopanitsa」

彼のバンドにも在籍していたアコーディオニストの中でもこのヒトがとびきりヤバ過ぎでして。

Petar Ralchev

リリースされたばかりのCD "When The Bees Are Gathering Honey" Zig Zag Trioを渋谷タワーレコードの試聴機で見つけて金縛りになって以来のファン歴30年。

数年前の来日説には狂喜乱舞しましたが残念ながら実現せず。



弾きまくりとは対極のスタイルで一番影響受けたのはこちらのバンドネオンの巨匠。

Dino Saluzzi A Mi Hermano Celso

いやぁ、言葉になりません。

ちなみに3枚目の拙作ソロアルバム『稜線』のタイトル曲はSaluzziへのオマージュとして書きましたとさ。




っていう感じでもうすぐハタチというタイミングでアコーディオンを始めてから仕事をするようになるまでに色々な演奏家の方々を聴いてきたんですけど、特にこれらの諸先輩方からは随分と影響を受けてきました。




単に紹介するだけだったらも〜っと沢山いろんな方がいらっしゃるんですけど、既に情報過多な気がするし、ここでは自分にとって特筆すべき方々だけを採り上げておりますのでその点どうかお許しを。




◆いま気になる蛇腹◆




スゴい演奏を聴く度に、ガーンと凹み、自分の出来なさ加減に呆れ、精進を誓う日々は今も全然変わらないワケですが、凹ませてくれる素晴らしい方々がどんどん出てきてるんですよね。



さて、以下はその動向を注目してる皆様。


フランス2トップの彼らも今や中堅どころ。

Vincent Peirani Made in France

マイスペース(古!)に音源upしてた頃から注目してましたが最早スタープレーヤーですね。


David Venitucci Chorro



そしてポルトガルの2人のJoãoも素晴らし過ぎる。

João Frade improviso em guimarães Parte 2



João Barradas "Portrait" 



アコーディオンの世界でもクラシックとジャズの二刀流がそれほど特別ではなくなってきているという事実。



ロンドン界隈にはこんな2人が。

Anatole Mustar midwest accordion emo

Layers (feat. Louis Cole, Karl McComas-Reichl, Jonathan Huber)

若者すごいぞ。



Charles Kieny


こっちの若者もすごいぞ。メタルもやるんだと。




バンドネオンの若者もすごいんですよ。

Santiago Arias  "Mañana es Mejor"


MICHAEL ZISMAN Swiss Jazz Orchestra feat. MICHAEL ZISMAN

たまらん。 



そうそう、バンドネオンの弾き語り方面ではこのレジェンドも忘れられないので念の為。

Ruben Juarez Desencuentro






一方、アゼルバイジャンも要注意。「ガルモン」という小型のやつ弾きまくり。

Ramin Huseynov



コンサーティーナも要注意です。

Cormac Begley O'Neil's March




クラシック方面も若者すごいんですよね。

オラオラ系コレでもか的な演奏に惹かれる向きもあるのでしょうけど、個人的にはそういうのとは全く反対側の、決して目立つことなく美しい音を奏でるための超繊細テク満載の演奏には感服してしまうワケです。


Janne Rattya

奥ゆかし過ぎて動画が全然無いのもタマらんのですが。



Vincent Lhermet

バロックのアンサンブルもっと聴きたすぎる。



Ryan Corbet

ボタン全盛のクラシック界で鍵盤のこういう奏者が出てくるの最高だし、細かい違いはあるにしてもボタンだろうが鍵盤だろうがやっぱり音楽が素晴らしいのがイイんだよなぁ。




◆          ◆



若手…とか言ってる時点でただ自分がジジイになっただけなんですげど、いや兎に角みんなスゴいよなー。

昭和生まれも頑張るしかありませぬ。




というワケでジジイの名に恥じない随分と長ったらしい内容になりましたので戯言はこの辺で。



音楽談義に花を咲かせるトークセッション企画《耳の内側》、これからも素敵なゲストをお迎えして引き続き開催していく予定なのでどうぞ今後ともよろしくお願い致します。

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