ここ数日、とある友人から、かなり面白い内容の質問責めにあっておりました。
その中の、主な議題のひとつは、
『アコーディオンはボタン式と鍵盤式で音色が違うのか?』
というものでした。
出ました、永遠の【ボタンvs鍵盤】論争。
この際だからと思い、自分なりの考えをまとめてみました。
ただし今回は『音色』だけに限って、あくまでも自分なりの考えですので、異論も多々あるかと思いますが、どうかお許しを。
結論から言いますと、上記の質問には、
『ボタン式でも鍵盤式でも中身が同じなら音色は同じ』
また別の言い方で
『音色そのものの違いは楽器の中身の違いであって、ボタン式か鍵盤式かの違いが音色を決定する事はない』
という回答をしました。
早速、異論反論が出てきそうですが、しかし今のところ自分としてはそう思わざるを得ません。
質問の主にも、これを理解して頂くまでには少々時間を要しました。
外見からしてボタンと鍵盤の違いは一目瞭然ですし、そこに目が奪われてしまうのも仕方がありません。
しかも、いくつかの機種の"内部"を見て比べる、という様な機会もなかなか無いでしょうから、尚更無理もありません。
ギターやヴァイオリンやトランペットなど、他の多くの楽器は、発音部分や共鳴する部分が目に見える外側にあるワケで、そこに大きな違いがあれば自ずと音色にも影響するはずです。
しかし、ことアコーディオンに限って言えば、発音部分のほぼ全てが楽器の内側に収まっている為、その違いについて外から見ただけで判断するのはなかなか難しいと思います。
例えばココに、ボタン式と鍵盤式の楽器があって、どちらも本体のサイズと構造と内部の仕様が"完全に"同じだったとします。
そしたら、果たして音色そのものの違いはあるでしょうか?
恐らくそれは、ほぼ無いと思います。
勿論、何をどの様に演奏するかによって、ボタン式/鍵盤式それぞれの演奏上の特性は出るかも知れないけれども、それは演奏者によるフレーズや音楽の違いであって、『音色』そのものには違いがないはずです。
アコーディオンの内部には、音色を決定付けるいくつもの要素がありますが、その中でも重要な要素は下記の6つではないかと思います。
●リードそのもの(スチール(鉄)/真鍮/ハンドメイドか否かも含む)
●リードプレートの留め方(蝋留め/鋲留め/又はその両方)
●リードボックスの数と組み合わせ(HMML/MMML/など)
●MMもしくはMMMのチューニング(波/ピッチのズレ)の具合
●チャンバーの有無
●サブタ皮/レザーバルブ(材質など)
その他にも、各パーツの素材や、各パーツの組み上げ方、使われている木材の材質や処理の仕方(ニスの塗り方など)、楽器そのもののカタチやサイズなど。
数多くのパーツで作られている事と、楽器そのものの種類も多岐に渡るため、音色を特徴づけるものを他にも細かく数え出したらキリがありません。
例えば、チャンバーの機構が付いた楽器は、それが付いていない楽器と比べると、より柔らかでまろやかな音色になります。
また、リードプレートが《鋲留め》だった場合、《蝋留め》のものと比べると、より金属的でシャープな音色になります。
楽器そのもののサイズや構造の違いから生まれる、微妙な音色の違いが少しはあるかも知れません。
ですが、もしも、中身は全く同じで、ボタン式と鍵盤式による音色の違いがあるとしたら、一体どの様な違いがあるのでしょうか……。
何にせよ、ボタン式か鍵盤式かという部分は、音色そのものを大きく左右する要素ではない、と思わざるを得ません。
例えば、鰻(うなぎ)が《重箱》に入っているか、《丼》に入っているか、で味に違いがあるでしょうか?
味の違いは、鰻の焼き方やタレやゴハンによって決まるワケで、器の違い(確かに大事な要素ではありますが)が味そのものに大きく影響があるとは思えません。
見た目に大きく違いのある、ボタン式か鍵盤式かという点から、音色の違いに言及したくなる気持ちは分からないでもありません。
ですがソレは、あくまでも重箱か丼かって言うトコロだと思うのです。
☆この記事は、あくまでもボタン式と鍵盤式の『音色』についての考察で、それぞれの特性や操作性を言及するものではありませんし、どちらかを推奨する様な内容でもありません。
☆またこれは、アコーディオンの右手側の音色にのみに焦点を当てたもので、左手側のボタン部分について言及したものではありません。
☆見た目に惑わされない為に、敢えて写真などは使わない様にしました。
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…と、こんなコト書いておきながらナンなんですが、コレは色々と質問を受けて良い機会だからと思って考えをまとめてみただけで、自分にとって本当はそんなのどうでも良いコトなんです。
ボタンだろうと鍵盤だろうと大事なのはそれでどんな音を出すか、だと思うのです。
鉛筆で書こうと万年筆で書こうとより重要なのはそれで何を書くか何を書きたいかだし、道具も大事だけどそれを使って表現しているものを楽しみたいワケで、表現する為にその道具をとことん使いこなせる様になりたいし、音楽そのものについてもっと深めていきたいワケです。
(加筆 2019/07/04)
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